after the trip /NY

<この内容はmegropressの旧ブログの記事をそのまま表示しています>

今回はBrooklynを中心に、ニューヨークのレタープレスのスタジオをいくつか回りましたが、いろんな人に会ったりして、個人的に感じたことをいくつか。

浸透度は高い
とにかく、ニューヨークでは、レタープレスは非常にポピュラーでした。これはサンフランシスコでも同様でした。
モノとしては、カードというのが一番目にすることが多いのかと思いますが、グリーティングカード売場でもレタープレスの商品がたくさんあり、棚 に”letterpress”というカテゴライズがされてたりもします。
また、カスタムオーダーも非常に盛んで、名刺だけでなく、イニシャル入りのステーショナリーなどもポピュラー。ステーショナリーショップには、必ずカスタマイズを受付けるデスクとスペースがきちんととってあり、分厚いレタープレスの見本帳がたくさん待ち受けています。

wedding需要が大きい
これは変わらず、という感じですが、一番大きなのが、結婚式の招待状とバースアナウンスメント(赤ちゃんが生まれたときに出す案内状)。手作業で時間も労働力もかかる印刷方法なので、価格はそれなり。なので、特別な時に、という感じはあるようです。

特に結婚式の招待状については、ウェディング雑誌を見ると、ドレスや会場のコーディネートと同等に、ペーパーアイテムについても紹介されていて、その アテンションの高さがうかがえます。最近は、不景気もあってニューノーマル的にはレタープレスは最小限にする動きもあるようですが。
日本の結婚式はもっといろんなスタイルが出てきてもいいよなーと思う。

あらゆるテイストのデザインがあって、もう、どれもかわいい!

裾野が広い
たくさんのレタープレスのデザイナー/プリンターがいるので、スタイルも様々。紙もコットンに限らず、いろいろな紙へ印刷されたものや、インプレッションもディープなのもあれば、あえてフラットなものもあり。
また、以前こちらでもかいたように、レタープレスをやってみたい人への門戸も開かれていることも、印象的でした。教える側にも若い人たちが活躍していて、レタープレスを支えるの裾野の広さを感じた。

強いプレスのワケ
アメリカのレタープレスはとにかく、すごく強いプレスのものが多い。私は5〜6年前に最初に出会ったのがアメリカのレタープレスで、そのプレス感に惹かれここまで来たのですが、日本の「活版」とはなんだか違う感じがして、その違いはなんなのだろうという疑問がずっとありました。

集めたカードたち。どれもプレスがグッと強い。

アメリカで訪ねたレタープレススタジオのほとんどは、鉛の活字は一切使わず、樹脂版を使って制作する方法をとっていました。人々に話を聞いてみると、なるほど、この樹脂板の登場が、やっぱり画期的だったのか、と思います。

10年くらい前に樹脂板が登場し、そのおかげで、PCでデザインしたものをそのまま活版印刷できるようになった。活字を使わないでも活版印刷できるようになった。
確かに活字は、重いし、かさばるし、扱うのには職人技がいる。この辺はやっぱり万国共通で、もちろん、その良さはすごくあるけど、日本と同じように、アメリカでも昔ながらの活版屋さんは残念ながら衰退していっているのでした。その一方で、別の形で 今の要素を加えながら復活してきた姿が、この樹脂板を使った「新しい」活版印刷だった。

活字は柔らかい鉛で作られているため、活字を使うときは痛めないよう、強くプレスしてはいけないけど、樹脂板を使えば、そこを気にしなくていいので、強くプレスすることができる。
強いプレスで初めて生まれる深い凹凸感、この「インプレッションを楽しむ」 という新たな価値観が、この10年くらいで育ってきたんだなーと思うのです。

PCでおこしたデザインをそのまま樹脂版へ。
picture taken at Sesame Letterpress

紙はコットン
また、紙は、やわらかい コットンペーパーが、レタープレスには最適といわれていて、今回訪ねたスタジオでも、みなコットンの紙を使用していました。定番は、Craneの Lettra #110。
欧米では昔、コウゾや三椏のような紙作りに適した植物が周りに豊富になかったため、古い衣服などの綿を原料にして作られたコットン製のペーパーが根付いた、とか。
厚めのコットンペーパーは、やわらかくて、強くプレスを押したときにくっきりと深いインプレッションが残る。

“pillowy deep” impression
{ image : from moontree letterpress blog }

後押しするトレンド
さらに、エコ、クラフト、という要素なども加わって、レタープレス人気を推し進めています。コットンペーパーは、原料が綿なので、木を切らなくて済むのでeco、とされ、インクもsoy inkを使用して、”green”を謳うレタープレススタジオも。また、レタープレスでの制作は、印刷機にモーターはついてたりしますが、手作業がほとんどのため、手仕事感、手作り感を求める今の時代の雰囲気も押しています。
また、以前書きましたが、結婚式のインビテーションにはレタープレスが最適、という風評なんかもあって、華やかさ、カラフルさ、という要素が加わって、現在のような鮮やかで、プレスの強い、アメリカ的レタープレスの文化が熟成されてきたといえるんじゃないかと思います。

日本の「レタープレス」として
そういう意味では、日本とアメリカのレタープレスのスタイルが違う、というよりも、アメリカのほうが少し早くバリエーションを経験している、ということな気がします。
樹脂板が開いた世界を「レタープレス」と書くとすれば、日本の「レタープレス」がこれからもっともっと出てくるはず。樹脂板だって、活版名刺を持っている人は多くいて、デジタルな組版はすでにポピュラーなのだと思うのですが、グラフィックがどんと出ている感じはあまりないような気もします。日本語、日本の紙を使って、さまざまなスタイルが生まれてくるのだと思います。アメリカとはグリーティングの文化や、結婚式の文化などがやはり違うので、日本でどのような発展をとげるか、これから、ちょっと楽しみです。

私がもともと憧れていたのは、このアメリカ的な、自由で、グラフィカルで、カラフルなレタープレスでした。このblogでも、「活版」というとイメージするものが少し違う気がして、あえてカタカナで「レタープレス」と書いてみたりもしてました。
日本の活版印刷のスタイルのバリエーションを豊かにするそのひとつとして、megropressなりのスタイルで、レタープレス作品を生み出していきたいと思います。

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