the
BRAND-ING
DIALOGUE
現在進行形で変化し続ける
彼女たちとの対話の記録
温もりと、誠実さ。
信頼を深める
ものづくり。
Interview 01
Izumi Yagishita / PUR
長野県松本市を拠点に、ライフスタイルブランド『PUR』を運営する八木下 泉さんは、長年ブランド活動を続ける中で「自分が心から着たいと思える服をつくる」というビジョンを明確にし、リブランディングに挑戦しました。コロナ禍を機に立ち止まり、自分のブランドが本当に進むべき方向を見つめ直した泉さんの物語は、ブランドを持続的に成長させるための一つの指針を示してくれます。
今回は泉さんに、リブランディングを通じて生まれ変わったPURについて、そして変わりゆく自身とブランドのあり方について、megropress代表の目黒洋子がうかがいました。
「自分が誇れる服を作る」──リブランディングへの道のり
泉さんがリブランディングを考え始めたのは、ブランドに少しずつ違和感を抱き始めたときでした。
「ブランド活動も長くやっていますが、若い頃は“かわいい”と思うものを作ることに満足していました。でも、本当に自信を持って販売できているのか?と問うことが多くなったんです」と泉さん。
やがて訪れたコロナ禍が、これまでの道を一度見つめ直し、自分が本当にやりたいこと、そしてそれをどのように形にしていくかを深く考える機会となり、megorpressへの依頼へと繋がります。
特にリブランディングの際に強く意識したのは、「世の中の流行に流されず、自分が堂々と着たいと思える服を作る」こと。
デザインやスタイルだけでなく、その生産背景や素材の選定にもこだわり、自らの手で見届けた生産プロセスを大切にしています。
例えば、オリジナルのデニムを新たに作った際は、広島のアイテムは工場に足を運び、製造過程をすべて自らの目で確認し、納得のいく品質であることを確かめてから採用しました。
PURの服には、泉さんの信念とともにそのプロセスの一つ一つが丁寧に刻まれています。
ブランドの本質を引き出すデザイン
リブランディングを通じて、泉さんはブランドの本質を言語化し、形にするために、megropressとともにブランドメッセージやストーリーを再構築しました。
「自分の思いを言葉にしてもらえたことで、ブランドの軸が明確になり、自分自身も納得できるメッセージが完成しました」と泉さんは振り返ります。
そのブランドの在り方を象徴するものとして、製作したのがブランドのロゴでした。
「手書きの温かみがありながら、洗練された印象のロゴにしたい」との要望に応え、インドのヴィンテージコットンやネパールの手編みニットといった、泉さんのこだわりを象徴するアイテムに通じるロゴが完成。
完成したロゴは、洋服のタグや刺繍、デニムのパッチにも採用され、ブランドの一貫した印象を支える重要な要素として活用されています。
伝えたかった思いが、形ある言葉に
リブランディングする前の大きな課題は、自らのブランドの思いや方向性を言葉でうまく表現できないことだったといいます。
「これまで、ずっと一人でブランドを作り上げてきましたが、ブランドの価値観や思いをきちんと伝えたいと思いながらも、言葉でまとめることができずにいたんです」と振り返ります。
実際、泉さんが一番伝えたかった「温もり」「本物」「環境や社会への配慮」といった想いを、どうすればお客様に響く形で言語化できるのか、模索し続けてきました。
今回、ブランディングを進めるなかで、泉さんの思いが「メッセージ」や「ストーリー」として一つひとつ言葉になり、整理されていきました。
「自分の気持ちをここまで正確に、しかも美しい言葉で表現してもらえた体験は本当に嬉しかったです。『こんなにきちんと伝わるんだ!』という驚きと同時に、自分の言葉じゃないけれど、目黒さんが作ってくれたその言葉に、すべてが詰まっているように感じました。」泉さんの表情は明るく、感謝の気持ちを隠しきれませんでした。
「実際、このストーリーに共感したといってくださるお客さまもいらっしゃいます。Webサイトやリーフレットにも掲載していますし、英訳したものをTシャツのデザインにもしているんです。」
ブランディング時の資料の一部↓
ブランドアイテムが持つ存在感と反響
リブランディング後にあらたに製作した活版印刷のショップカードも、お客様の反応が大きかったもののひとつです。
PURは店舗がなくオンラインストアのみで受注販売のスタイルをとっているブランドですが、POP-UP SHOPではショップカードをタグとして服に付けて、ディスプレイ販売しているそうです。
お客様の手に取られることが多く、「この紙はどんな紙ですか?」といった質問もよく寄せられるそうです。「目で見るだけでなく、手に触れてその質感を感じてもらえるのがいいですね」と泉さんは語ります。ショップカードを通して、ブランドの温かみや丁寧な作りを伝えることができることがうれしいといいます。
また、リブランディングによって、泉さんが追求する地球環境や社会問題への配慮、そしてクオリティへのこだわりが、ブランドイメージにしっかりと反映されました。
このブランディングが彼女の活動を後押しし、PURに共感してくれる理想のお客様と出会える機会が増えたのです。その結果、泉さんも自信を持ってブランドを発信できるようになり、「本当に良いものを届けたい」という想いを堂々と伝えられるようになりました。
泉さんが選んだのは、リサイクルされた牛乳パックやコーヒー滓を使い、福祉施設で作られている手漉きの紙と、活版印刷というアナログな印刷手法。
変わりゆく自分とブランドへの誇り
ロゴを始めとするデザインやメッセージがブランド全体に行き渡ったことで、目に見える「一貫性」も生まれ、ブランド全体にプロフェッショナルな印象が与えられるようになりました。
「オフィシャルなイメージが一気に強まったことで、自信を持ってブランドの発信ができるようになりましたし、インスタグラムの投稿にロゴを載せるだけでも、ブランドとしての統一感が出てきているんです。今まで自分の中でぼんやりとしていたブランドの軸がはっきりと形になり、すごく嬉しかったです」と泉さんは語ります。
泉さん自身も少しずつ変わり、自信を深めていきました。「SNSの発信も、今は自信を持って『本当に良いものだからこそ、お客様に届けたい』という気持ちで発信できています」と泉さん。リブランディングによって作り上げられた新しいPURの姿が、泉さん自身をも前向きに変えていきました。
さらに、PR活動のサポートも功を奏し、雑誌などでの露出が増えるなど、メディアからの関心も高まっています。ブランドの魅力が適切に伝わることにより、PURの存在がより多くの人々に届くようになったのです。
泉さんにとってこのリブランディングは、「自分のブランドに一貫したストーリーが生まれ、誠実さを大切にする姿勢がよりお客様に届くようになるための大きな一歩」だったのです。
未来に向けてのさらなる進化
リブランディングのプロセスを経て、自分自身の思いをブランドに投影する大切さを実感した泉さん。
最近、東京や鎌倉の展示会に出展した時を振り返り、「憧れのブランドと対等に並んで出展できたり、今のPURに共感してくれる新規の方もたくさん来てくださって、とてもうれしかったんです。」と話してくれました。だんだん自分が理想としていた姿に、ブランドが近づいて行っている手応えも味わえているようです。
「ただロゴを変えただけではブランドは成り立たない」と語るように、ブランドのイメージが一貫することの重要性を強く感じているそう。これからも自分の軸を見失わず、より一層進化させていく計画を練っています。
泉さんのブランドは進化を続け、次なるステップに向かおうとしています。
PURの歩みは、女性たちが自分の価値観に基づいてビジネスを作り上げていくための素晴らしい指針だと感じます。
そして、ブランディングという手法は、彼女のように悩みながらも前進する女性たちを力づけ、応援するものでもあるのです。
インタビューと文:目黒 洋子
写真撮影:渡邉 まり子
会場協力:Cafe Yukiri
the Brand
PUR(ピュール)は、世界の誰かに愛されていた服たちを、丁寧に修理・リメイクし、新たなアイデンティティを持った服として取り扱っています。また、これからの未来を生きる女性たちにふさわしい、新しいスタンダードとして毎日使いたい服もオリジナルで展開しています。どこまでも純粋い、あなたらしさが共鳴する服を纏って欲しい。それが、PURの願いです。
Brand site
https://pur-official.jp/
Online store
https://pur-official.shop/
Instagram
@pur__official
八木下 泉
「PUR」
ファウンダー/デザイナー
ショップスタッフや読者モデルを経て2012年にライフスタイルブランド「PUR」を立ち上げる。
インドやネパールなどの手仕事の温かさを感じられる服を展開。
衣食住の大切さを実感し、食と衣類の間のスタイリングを手がけフードコーディネーターとしても活動。
プライベートでは、二児の母。
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