
the
BRAND-ING
DIALOGUE
現在進行形で変化し続ける
彼女たちとの対話の記録
自分のブランドを育てる旅
Interview 01
Ayumi Nishio / Penemuan!
元環境観測隊員という異色の経歴を持ち、その後、Penemuan!というクレイジュエリーのブランドを立ち上げ、クレイジュエリー作家として活躍してきた西尾 歩美さん。
megropressとともに自身のブランドと向き合い直すことで、ブランドを通して伝えたかったことやその価値を表現できるようになりました。彼女がどのようにしてブランドへの眼差しを深めていったのか?彼女が体験したブランディングの意義や、そのプロセスから得た気づきとは?megropress代表の目黒洋子がインタビューします。

クレイジュエリー作家としての葛藤と決意
「ブランディングという言葉も知らなかった」という歩美さんは、作家として自身の作品を世に送り出す中で、ブランディングというものを知り、その必要性を徐々に感じ始めました。
自身のホームページやブランドの見せ方に悩みつつ、理想のスタイルを探していた彼女は、たまたま「megropress」に出会います。その雰囲気やデザインに惹かれたものの、当時はその一歩を踏み出す勇気が持てず、自分で何とか形にしていく方法を選びました。
その後、何年か経ちクレイジュエリー作家としてのキャリアも順調に進み、大きな展示会への出展が決まりました。出展にあたって選考もあるなか、見事に通過。実際に世界から来たバイヤーたちに自分の作品を評価してもらう機会を得て、海外での取引も決まるなど、充実した結果を残しました。
でも、新たなステージに立った彼女が感じたのは、「商品は評価されたけれど、自分のブランドのことがちゃんと表現できていない。伝えたいことが伝えられていない」というもどかしい思いでした。 同時に、「自分のブランドをよりかっこよく見せたい、ハンドメイド感を脱却したい」と再び強く感じたのです。
その時、ふと「megropress」を思い出し、再びWebサイトを見てみると、何年か前に思った良い印象が変わっていないことに気づきました。今がそのタイミングだと確信。「雰囲気があって、細部にまでこだわりを感じさせる人だと思った」という直感を信じて、問い合わせを決意しました。
「いわゆるデザイン会社も検討しましたが、どんな方が私の担当になってくださるのか不明瞭でしたし、私のペースを乱されそうな気がして。自分も母として子育てをしているので、同じ立場で共感できる人にお願いしたいという気持ちもありました」と語ります。
↑リニューアル前の「Penemuan!」のWebサイト
↑リニューアル後の「Penemuan!」のWebサイト
目の当たりにしたプロの仕事、そして自身の進化
いざ始まったブランディングの取り組みでは、コンサルタントとの対話を通じて、自分と深く向き合う時間が流れていきました。数々の質問により、自分がまだ言葉にできなかった思いや、無意識に抱えていた価値観が掘り起こされていきました。
「打合せを重ねるごとに、目黒さんが私自身やブランドのことを深く理解してくださっていることが手に取るようにわかり、同時に自分自身とブランドがクリアに見えるようになっていきました。」とそのプロセスを振り返ります。
最終的に目の前に提示されたコピーを見たとき、「ああ、これが私がずっと伝えたかったことなんだ!」と感じた彼女。その瞬間、ずっと抱えていた何かがすっと解けるような清々しさがあったと言います。
また、その思いを視覚的に表現するプロセスとして、ホームページ用の写真撮影にも臨みました。プロのフォトグラファーやヘアメイクアーティストと一緒にチームとして準備を進め、撮影当日は「すごい!」と感じるプロの仕事に触れながら、自身もどんどん進化していくような気持ちだったそうです。
「何もかもが新鮮で、自分が“変わっていく”のを感じていました。ずっと心の中にあったモヤモヤを成仏させただけでなく、さらに多くの学びや成長があり、心からやって良かったと思えました。私、進化しちゃった!とまで思いました」と彼女は語ります。
ブランドのことを伝えるための手段が、言葉だけでなく、高いレベルで視覚的なツールとしても具体化されたことで、ひとつの達成感を感じたそうです。
「自分のブランドは、自分とは別の人格」という大きな学び
ブランディングのプロセスを通して、彼女の中で大きな変化が生まれます。「自分自身を投影するというより、ブランドは別の存在として育てていくんだ、という目黒さんから伺った新しい考え方に出会った時、本当に目から鱗でした」。
もともと「ブランドは自分の延長である」と捉えていた彼女は、ブランドを「自分とは別の人格」として育てる感覚を学んだのです。この視点が、ブランディングを「表面を整える作業」から「ブランドの本質的な価値を見つける過程」へと昇華させました。
ブランドのことを格段に捉えやすくなり、ブランディングを取り組む上でも、スムーズな言語化の一助になりました。そして、この考え方が身についたことで、人間関係にも変化がありました。
「特に、子どもや一緒に働く人に対しても、無意識に自分の延長線上で考えなくなりました。今では、自分と他者を切り離して捉えられるようになり、コミュニケーションもスムーズになりました」と彼女は話します。
家族に見せる背中、母としての誇り
歩美さんは、偶然の機会で撮影現場に来た子どもたちに自分が真剣に取り組む姿を見せることができたと語ります。「自分のブランドを一生懸命に表現しようとしている母の姿を、子どもたちが興味深そうに、楽しそうに見守ってくれたのは、私にとっても大きな喜びでした」。
自分の道をしっかり歩む姿を子どもたちに見せられたことは、彼女にとっても誇らしい経験であり、「やりたいことを形にしている母」としての自信を得られた瞬間でした。
柔軟な選択、自分らしさを大切にする働き方
歩美さんは、ブランディングを通じて自分のブランドの表現を理想的にまとめ切り、大きな満足感を得たと感じています。
同時に、気づくことができた自分の思いがあったといいます。
「実は、本当はもっと家族との時間を大切にしたいと思っていたけれど、活動を縮小する勇気が持てずにいました。でも、ブランドに真剣に向き合ったことで、確実に視野が広がり、ブランドを大きくすることが自身の幸せではないのではないか、と気づいたのです。」
今は家族との時間や自分のペースを優先今は家族との時間や自分のペースを優先し、クレイジュエリーの活動を一時的にスローダウンしています。
「クレイジュエリー制作をやめたわけではなく、今はセーブしているだけ。またいつか自分のペースで再開できる場所だと感じています」と話す彼女。
こんなふうに家族の状況に合わせて柔軟に働き方を調整できるのも、自ら事業を興し、やりたいと思ったことをやり切ってきたという経験があるからこそだといえるでしょう。
自分の本質に気づかせてくれたブランディング
「ブランディングを実際にやってみて一番の収穫だったのは、表面的に整えるのではなく、自分の本質を表現する言葉や見せ方が明確になったこと」だと振り返ります。
また、ブランディングに取り組むなら「直感的にしっくりくる相手を選んでほしい」とアドバイスします。雰囲気や価値観に共感できる人と取り組むことで、本当に自分らしい表現が可能になります。特に、ブランディングのプロに自分の内に秘めた想いを言葉にしてもらえたことは、彼女にとって大きな意味を持ちました。
自分でも表現しようと努めてきたものの、しっくりくる言葉に届かないもどかしさを抱え続けていた彼女にとって、「そう!これが私が伝えたかったことなの!」と感じられる言葉を引き出してもらえたのは、何にも代え難い経験だったといいます。
自分を生き切ることの価値
歩美さんは、クレイジュエリー作家として多くの経験を積むなかで、あるとき、理想とする「在り方」を思い描きました。そこで見えたそのぼんやりとした形に、彼女はしっかりと向き合ったのです。
そのぼんやりとした形を具現化しようと、一度自分でやってみたけどうまくいかなかった。でもそこで諦めず、今度は自分の感覚を理解してくれそうな”しっくりくる”相手を探し、ともに進むことにしたのです。
この先の人生、どうなるかわからない。でも、今ここにある思いは紛れも無い真実。それを花開かすも、見て見ぬふりをして、無いことにするのも自分次第です。
歩美さんは「自分を生き切ること、表現し切ることは人生の宝物」だと感じています。
尽きない逡巡を超え、やり切ったところに見える景色があります。歩美さんも、やりたいことを諦めかけている人たちにも「まずはやってみて」と心から伝えたいといいます。
「大人になると、あれこれ言い訳をしてやりたいことに蓋をしがちですが、やっぱり何事もやってみないことには始まらない。やってみないとやり切ることもできない」と歩美さんは言います。
「やり切って、清々しい気持ちで自分を表現できるようになった先には、必ず今までよりも一歩も二歩も先の景色が見えるようになります。そして、次なる自分への大きな追い風になります。自分の活動に悩む人たちにとっても役立つアドバイスになれば」と語る彼女の経験は、単にクレイジュエリー作家としてのブランディングの成功談ではなく、自分を信じ、思い切って一歩踏み出すことの大切さを教えてくれます。
「頭の中にあるもやもやを現実化させることが、人生の質を変える」。
彼女が得たブランディングの経験は、自身の表現力を磨き、家族との関係を良好にし、さらにはビジネスの成長にもつながりました。
彼女の経験は、同じように自身のブランドを今一度見直したいと考えている女性たちにとって、チャレンジすることの意義を伝えてくれているのではないでしょうか。
インタビューと文:目黒 洋子
写真撮影:渡邉 まり子
会場協力:PRINT+PLANT
the Brand
「Penemuan!」は「ペネムアン」と読み、インドネシア語で「発見」の意味。Penemuan!は、既存の枠にとらわれず、軽やかに、そして、あざやかに生きる女性たちのためのジュエリーブランド。作品は、デザイナーである西尾歩美の礎となった五島列島の景色、海洋観測技術員として世界を周り見聞きした多様な自然や人々の営み、地球が創り出すその色合いから紡ぎ出されています。
Website
https://penemuan-world.com/
Instagram
@penemuan_
西尾 歩美
クレイジュエリーブランド「Penemuan!」
ファウンダー/デザイナー
大学時代、海洋環境学を修める。
その後、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の海洋観測船にて気候変動のメカニズム解明の研究に貢献。
北極海やパタゴニア周辺まで、世界の海を観測する。
2018年 秋田悦子先生(株式会社ニコネル)に師事
2019年 ニコネルクレイジュエルの認定講師
2020年 Penemuan!として活動開始、現在に至る
プライベートでは2人の女の子の母。そして、海と山、美しい地球をこよなく愛する自然派。
megropressでは、「ブランドを見直し、整え直す」リブランディングプログラムをご提供しています。
無料のブランディング相談もございます。
ご興味ある方はどうぞご覧ください。
“Re-Brand Your Business”
自分のブランドを見直したいブランドオーナーのためのプログラム