基本は、新しい。

「基本は、新しい」と聞いて、最初は少し違和感がありました。
基本って、一番最初にあって、ずっとあるものというイメージがあったから。

この言葉は、松浦弥太郎さんの本で出会いました。
VISIONARIAの打ち合わせでも、何度も話題にのぼる方です。

弥太郎さんがよくおっしゃることに「基本」ということがあります。

著作の中で、なんでよく基本の話をしているのか、ということをご本人が語ってらっしゃる一節があって、そのなかで、「基本は、いつも新しい」という話をしていました。
一見、「基本」と「新しさ」って結びつかないような気がしたのですが、話を聞くと腑に落ちました。

弥太郎さんによると、基本のありようとは、「無駄なものが一切なくて、削ぎ落とされた最小限のものだけでスッと立っている」という状態。

余計な説明などを無くして、削ぎ落とした基本にすることで、新しい未知なるもの、新しいもののよさを、わかりやすく、素直に、ありのままに伝えているのではないか、と。
だから、「基本は新しい」のだ、ということが書いてありました。

そうなんです。
新しいことを伝えるときほど、削ぎ落とす必要がある。

私はブランディングという手法のなかで、そのブランドのコアを見つけるということを度々やっていますが、これこそ、そのブランドの「基本」を見つける行為です。

全部削ぎ落として、もうこれがなくなったらこのブランドではなくなってしまう、というところまで削ぎ落とす。その時に残ったものがそのブランドを、そのブランドたらしめる要素になります。

このコアな要素を、さまざまな場面に応じて、届け先に応じて、魅力的なかたちでに伝えていくという作業がその後にくるわけですけれど、この削ぎ落とす作業がブランディングの一番大事なところだし、時間のかかるところです。

初心に帰る、基本に戻る

いろいろやりすぎたり、こねくり回したり、さまざまな関係者の思いが重なったりすることで、基本から遠いところに行ってしまうことがあります。

そうなると、私たちはなんとなく違和感とかモヤモヤを感じてきます。その感覚は、本来のコア、つまり、基本からずれてきている証拠です。

そこで、私たちは最初に決めた基本に戻ろう、と考えますよね。

だからこそ、戻るべき場所がどこなのかを記しておくことが大事です。
それはブランドブックとか、コンセプトシートとか、クレドとか、いろいろな言葉で表現されるし、一枚の紙だったり、絵本だったり、分厚い冊子だったりと、さまざまな形をしていますが、なんらかの形で、言語化して見えるようにしておくことが大事です。

想いを伝えるために

弥太郎さんは、「どんなことでも、まずは基本を作らねばならず、それはものすごくピュアなものでなければいけません」とおっしゃっています。

そこが本当に胸を打つほどに、だいじだと感じました。
「ピュアさ」というところがとても重要で、心の奥からそのまま出た想いや情熱こそが、人を動かすのだと思うからです。

そして、それをあれこれ付け加えずに、シンプルに、わかりやすく手渡すこと。

結局のところ、ブランディングとは、新しいものを作る仕事ではなく、その人やそのブランドが、すでに持っている「基本」を見つける仕事なのだと思います。

誰かがあなたのブランドに初めて出会うとき、その人にとって、それはいつも「新しいもの」です。

新しいものを理解するときには、シンプルで、わかりやすく、「基本」であることが必要です。

時間が経ったブランドであれば、それを改めて見つめて、余計な装飾や手垢がついてしまっていないか、振り返ることをして、「ピュアな、基本であるか」を確かめたいですね。

基本は、いつも新しい。

私はこれからも、その言葉を確かめながら、ブランドの「基本」を見つける仕事を続けていくのだと思います。

この記事で紹介した本:『おとなのきほん 自分の殻を破る方法』 松浦弥太郎 著 PHP研究所
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