自分の仕事をつくる人たちから学んだこと
VISIONARIAのInstagramで、私たちの好きなものやインスピレーションを受けたものなどを紹介するコーナーができました。
そこで今回、本を紹介させていただいています。その内容を少し深めて、記事にしました。
本棚に、ずっと残り続けている理由
私の仕事や活動の根底には、何度も読み返してきた本があります。
そのうちの一冊が、西村佳哲さんの『自分の仕事をつくる』です。
その続編として出版された『自分をいかして生きる』とともに、引っ越ししても、断捨離しても、ずっと私の本棚にある本です。
2003年に初版が出版された本ですが、その内容は少しも古びてなくって、むしろ、自分らしい働き方や生き方を模索する人が増えた今だからこそ、改めて多くの人に手に取ってほしい一冊だと感じています。
私がデザイン会社に勤めていた頃、出版部門もあったその会社が発行していた雑誌に西村さんが連載をされていて、そのご縁で著者ご本人を知りました。
書籍は、その後にしばらくして手に入れましたが、もう長い間、本棚にあり続けています。そして不思議なことに、開くたびに違う言葉に目が留まり、今の自分に必要な気づきを与えてくれます。
この本は、さまざまな仕事をする人へのインタビューと、「働き方研究家」でもある西村さんの考察によって構成されています。デザインを軸にしながらも、登場する人たちの仕事はさまざまです。
そして、その人たちの仕事との向き合い方を通して語られる西村さんの考察には、本質を突く言葉がたくさん。私の本には付箋がたくさん貼られてます。
できれば、読んだ多くの人と響く言葉を分かち合いたい気持ちが強くて、ぜひこれは読書会を開きたいところです。
今回は、「頼まれもしないのにする仕事」という話を紹介しようと思います。
「頼まれもしないのにする仕事」が、自分の仕事になる
西村さんは、インタビューした人たちに共通して見られることとして、
「彼らの仕事が持つ魅力の源泉は、働く中で、作り手本人が感じている喜びや快感にある。またその仕事の感覚は、「いつか」ではなく、今、この瞬間に向けられている。」というふうに語ります。
その仕事の価値は、誰かから与えられた役割や肩書きから生まれているのではなく、「その人自身」から生まれているということです。
誰かによく思われたい、とか、個性を見せたいとか、評価されたい、とか、そうした意図の前にある、自分の中の純粋な気持ち。たとえば、「気になる」「やってみたい」「放っておけない」みたいな、言葉にならないような感覚から始まる行動、頼まれてもいないのにしている仕事こそが、その人だけの仕事や表現の種になっていくのだと思います。
そして、この話と深くつながっているのが、もう一つの印象的な一節です。
「後先を考えない人は『馬鹿』と称されやすい。しかし未来は、今この瞬間の累積以外の何物でもない。」
そして、こう続きます。
「最も退屈な『馬鹿』とは、今すぐに始めればいいことを、『明日から』『来年から』と先送りにする人を指すのだと思う。」
まさにその通りです。私たちはつい、未来のどこかに理想の状態があるように考えてしまいがち。
「もう少し準備ができたら、やろう」「時間ができたら、やろう」「自信がついたら…」と言って、本当は今始められることを先送りにしてしまう。
けれど、未来は突然やってくるものではなく、「今」の積み重ねの先にしかなくて、だからこそ、この本に出てくる人たちは、「いつか」ではなく、「今」に重心を置いています。
誰かに頼まれたからではなく、自分の中から湧いてくる感覚を大切にし、小さくてもまず手を動かしてみる。その積み重ねが、やがてその人だけの仕事になり、生き方になっていく。
そのことは、私自身が、そして、VISIONARIAとして大切にしていることも、同じだと感じます。
ビジョンを描くことは、とても大切なことです。でも、描いたビジョンは、遠い未来にあるのではなく、今日、自分が何を感じ、何を始めるかという「今この瞬間の小さな行動」の中に宿っているわけです。
誰かのためではなく、自分のためにやろうとした純粋なこと。
頼まれてもいないけどついやりたくなってしまうこと。
それに取り組むことが自分自身を満たし、結果として、「誰かのための仕事」を含む仕事全体や人生全体に豊かな循環を与えていくのではないかと、私は思っています。
何度読み返しても、私は「いつか」ではなく、「今」という時間を大切に生きるのだ、ということを思い出させてくれる、大切な一冊です。
次回は、続編『自分をいかして生きる』について、紹介します。
この記事で紹介した本:『自分の仕事をつくる』 西村佳哲 著 (晶文社)