Monthly Press「片付けの効用」2026年9月号

Monthly Pressは、megropressの目黒洋子が、女性として、母として、人としての視点で、普段のブランディングやビジネスのこと以外に、シェアしたいことがらをその月のテーマとともにお届けする試みです。

1.先月の断片から
2.今月のテーマ
3.今月の小さなお知らせ


1.先月の断片から


・大洗の虹

8月はあちこちで集中豪雨がありました。夫の実家の近くも雨の被害に見舞われ、予定していた外出先を変更して、茨城県の大洗へ。

その途中、海に大きな虹がかかっていました。

雨がたくさん降ると、川が増水したり、交通が止まったり、人はどうしても右往左往してしまいます。

でも、海にかかる虹を見ながら、私たちも自然の大きな営みの中にいるんだなぁと、ふと感じた瞬間でした。

ブランド感性リサーチ

ブランディングのお客様とともに、さまざまな場所を訪れ、実際に体験する「感性リサーチ」をしています。

「ともに同じものを体験する」ことで、ブランドが目指すところを言葉にしやすくなること。そして、今、何が受け入れられていて、何が「良い」とされているのかという、「今の雰囲気」をお客様自身にも知っていただくこと。その二つを目的にしています。

今回も、お客様と3日間かけてリサーチを行いました。
「知っている」と「わかっている」は違う、とよく言われますが、実際にその場に行き、見て、触れて、体験してみることで、初めてわかることがたくさんあります。

そして、同じものを見ているからこそ、「あそこの、あれみたいな感じ」といった、言葉だけではなかなか共有しにくいニュアンスも、一緒に感じ取ることができます。

情報を集めるだけではなく、同じ体験を通して感じたことを言葉にしながら、お客様と一緒にブランドの方向を探っていく。

足で稼ぐ、というか、実際に街へ出て、身体を動かして、見て、感じて、確かめる。そんな体験を、これからも大事にしていきたいと思っています。

家族旅行で大洗の水族館へ行ったら出会った大きな虹

「ブランド感性リサーチ」で訪れた中国茶のワークショップ

 

2. 今月のテーマ「片付けの効用」

この夏、家の片付けをしました。

といっても、これまでも何度も片付けをしてきたので、決してものが溢れていたわけじゃないんです。

今回は片付けて、自分が軽くなったという実感が欲しい…!
そう感じていました。

50歳という数字が見えてきたことも理由のひとつかもしれませんが、私は最近、「とにかく軽くなりたい」という気持ちが強くなっていたんです。

だから、今回はとても大きな片付けだったといえます。


ずっと残ってきたもの

その時々で不要なものを手放して、整えてきていたのですが、それでも、毎回そこに残るものがありました。

何度片付けても、ずっと残り続けてきたもの。
使っていないのに、なぜか手放せないもの。

今回、その「ずっと残ってきたもの」に、初めて手をつけることができたことが大きかったといえます。

「ずっと残ってきたもの」とは、
「自己証明」と「誰かからの好意」の2つでした。

「自己証明」というのは、私はこれを習ってきた、これを読んできた、こんなことに関わってきた、ということを語るようなもの。自分のアイデンティティを支えてきたものたち、それから、「これは私が好きなものだから」「これは私らしいものだから」と、聖域のように扱ってきたものたち。

たとえば、タイポグラフィの本、デザインスクールの時のワークや資料、色彩やデザインに関する様々な本、カードにしようとして実現していないデッサン、海外で購入した数え切れないほどの活版印刷のカード、海外の活版印刷を通じて出会った人からの手紙……などなど。

そして、「誰かからの好意」というのは、いわゆる「誰かからもらったもの」ということだけではなく、「これは私のために選んでくれたんだ」という気持ちと、「私も、これを好きになれるかもしれないと思った」という、二重の理由が重なったものたちでした。

たとえば、母が譲ってくれた服、誕生日にいただいたものたち、良い香りのバスオイル、ハイブランドの商品などなど。

全部良いものだし、できれば使いたいと思ってもいた。でも、実際には何年も使っていない。
そのことが、判断を鈍らせていたのだと思います。

でも今回、手放すことができた。

なんだか、越えられなかった壁を越えて、その中にあるものに着手し、大きな進展があった、という印象です。

「何を捨てるか」ではなく「何を残すか」

その大きな進展の理由は、「何を捨てるのか」ではなく、「何を残すのか」にフォーカスしたことじゃないかと思います。

「何を残すのか」にフォーカスすることは、「何を捨てるのか」を見るより、より「残すもの」の数が少ないということを意味します。

残せるもの、つまり、これからの自分が持ちうる許容量というか、自分のキャパシティは、自分が思っているよりもっと少ないのではないか…
そんなことを思ったんです。

同時に、今回やってみて、少なく残して、それを愛でるほうが、それが引き立つことを実感しました。
つまり、大切なものを、より大切に扱うことができる。

なんとなく持っているものを淘汰したい。

全てに熱量を持って語れるようなものだけを、周りに置いておきたい。

それは、人生の姿勢としても、そうでなければいけないと感じたんです。

片付けとブランディングは似ている

考えてみると、これは最近、仕事でもずっと考えていることとつながっています。

何が大切なのか。
何を残して、何を手放すのか。
自分にとっての基準は何なのか。

それは、私が仕事でしているブランディングとよく似ているとも言える。

ブランドづくりも、最初から「これが正解」と決めることではありません。

その人がこれまでやってきたこと。
大切にしてきたこと。
好きなもの。
憧れてきたもの。
周りから受け取ってきたもの。

そうしたものを一度広げて、眺めてみる。

その中から、

これは今も大切にしたい。
これは自分らしい。
これはもう手放していい。
これは好きだけれど、今の自分がこれから向かいたい方向とは少し違う。

そんなふうに選び取っていく。

そして、残した大切なものが、ちゃんと伝わるように、言葉やデザインや活動の形を整えていく。

そうすると、それまでぼんやりしていた「自分たちらしさ」が、少しずつ輪郭を持ってくる。

「持っているものを並べ、確認する」→「削ぎ落とす=本当に大切なものだけを選び取る」→「改めて(”今”に合うように)整え配置し直す」→「それをより味わえる表現にしていく」

この流れは、片付けとブランディングは同じだといえます。

どちらも、何か新しいものを足すことから始めるのではなく、まず自分の持っているものを全部見てみること。

そのうえで、本当に大切なものを選び取ること。

そして、選んだものを大切にできるように、環境や仕組みを整えていくこと。

これは、私のギアチェンジ

今回の片付けは、単に「家をきれいにした」ということではなく、明らかな私の「ギアチェンジ」でした。

自分がこれまで何を大切にしてきたのかを眺め直し、今の自分に必要なものを選び直し、これからの暮らしをつくり直す。

そうやって、自分の基準をもう一度、自分の手で確かめる時間だったのだと思います。

洋服ダンスがまるまるひとつ空いた

とにかく本を全部出して、必要な本だけを残していく作業

3.今月の小さなお知らせ

VISIONARIAは現在エピソード40を配信中です。
40回目という記念すべき今回は、「”好きを仕事に”のその先にあるリアル」ということで、5つのリアルの1つ目「仕事と子育て」に迫る後半回。

以下のリンクより、家事の合間や移動中など、ぜひお耳に入れてみてください。

次へ
次へ

ブランドの2周年に考える「ブランドを育て続ける」ということ