“Quiet Sustainability”(静かなる持続可能性)の台頭

“Quiet Sustainability”(クワイエット・サステナビリティ) 「静かなる持続可能性」 という考え方があります。

この話、megropressが伝えたいブランドの本質的な部分と一致するところがあって、ぜひお伝えしたいと思いました。

 

Quiet Sustainabilityとは?

“Quiet Sustainability” 「静かなる持続可能性」とは、たとえ製品が売れていなくても、生産ラインに持続可能性をゆっくりとでも確実に取り入れてきたようなブランド、利益を上げるためにサステナブルだと誇張したりせず、着実に本質的な活動をしてきたようなブランドの活動を指します。

特に昨今、サステナビリティの話については、「うちのブランドは、ちゃんとやってますよ!」と声高にアピールし、注目を集めようとするようなところがあります。

それが行きすぎた形として、グリーンウォッシング(環境やサステナビリティに配慮していないにもかかわらず、しているように見せかけるビジネス戦略)があります。

 

Greenwashing、Green Hushing…相次ぐブランド側の欺瞞

ファッション業界でも、グリーンウォッシングで告発される企業が続きました。大きなところで2019年のH&M、最近ではルルレモンが記憶に新しい。

H&Mには、”Conscious Choice”(コンシャス・チョイス)」 というシリーズがありました。 環境負荷をかけていないシリーズという位置付けだったのですが、タグなどの文言に虚偽があるのではとノルウェー消費者庁が違法と判断し、その後各国にも派生した経緯があり、結局、H&MはCoucious Choiceのラインを2022年にやめてしまいました

ルルレモンは、企業の3つのメインミッションの一つとして”Be Planet”というアジェンダを掲げていますが(上の画像)、それに対して、環境リサーチ団体の「Stand.earth」が、意義を唱え訴訟に発展したという問題があります。 ルルレモンは、「自社の製品と活動は環境への害を回避し、健全な地球の回復に貢献しています」と記載しているが、なにも特別な策を講じず、これまでと同じような取り組みしかしていないではないか、と。

このような訴訟などが相次ぎ、本質的な取り組みでないものに対し、人々の厳しい目が向けられるようになってくると、今度は、「グリーンハッシング」という新しい言葉が登場しました。

グリーンハッシング(Green Hashing)」とは、細かいことを突っ込まれると困るからと、企業側が環境問題などについては意図的に何も言及しない、という、いわばダンマリ作戦を指す言葉として使われています。 HushingのHushは、口に指を当てて「しー!静かに」という時の表現ですね。

消費者から透明性を求められるようになり、取り組みを開示したところ、そのブランドが準拠している基準自体が曖昧だったことが露呈してしまった、良い印象を与えられるよう頑張ったのに、逆にメディアなどからよくない注目を浴びて裏目に出てしまった、といったことが発生。

「だったら、なにも言わないでおいたほうが得策だ」とブランドや企業が持続可能な取り組みについて意図的に報告しないというやり方が登場しました。

でもこれ、企業からの情報提供がなければ消費者としてその企業の活動を判断することができず、企業の姿勢としてフェアじゃありませんよね。

 

“Quiet Sustainability”が教えてくれること

環境問題やサステナビリティは、マーケティングと大きな関係があります。

マーケティングは、人々の不安や心配(ペイン)に対して、解決策を提示できるというところにあります。

人々が、自分が環境破壊や気候変動の加担者になりたくない、という不安を持っていて、そうならないように商品選択をしようとしているのですが、企業側から見ると、そこはまさにマーケティングのチャンスになるわけです。

スモールビジネスでも同じです。やっていないことをやっているような感じで言ったり、イメージだけで「良さそう」に見せていくことはやめなければなりません。

イメージアップのために不安を利用するブランドにはなりたくないですよね。

では、どうしたら良いか?

  • 誠実、正直であること

  • 本質的な取り組みを、実際に行うこと。

  • お客様とのコミュニケーションを真摯に取り続けること

それに尽きると思います。

そして、この本質的な考え方が、冒頭の「Quiet Sustainability : 静かなる持続可能性」につながります。

小さくても、一貫した着実な行動が、環境と社会のつながりに大きなプラスの変化を集合的に生み出すことの大事さを物語っています。

静かなる持続可能性」は、控えめだけど、強力なのです。

 

これまでの価値観はどんどん崩す、そしてブランド「BODE」のこと

日本をはじめ、本気でサステナビリティに向き合う小規模なブランドが増えてきていると感じます。

特にファッションの場合は、売れない服を過剰生産しているなら、たとえそれが環境に優しい生地で作られていたとしてもサステナブルとは言えません。それでもビジネスとして新しいものづくりをしていく必要があるという皮肉なループが存在します。

ますます、自分たちが大切にしたい、多くの人と共有したい考え方はなにか、自分たちの行動がその思いとぴったりと合っているか、を自問しながら進んでいくことが大切だと感じます。

そんな流れのファッション業界、今新しい在り方として注目を浴びるのが、「BODE」(読み方はボディー)という小さなブランド。まさに”Quiet Sustainability”を地で行く、肩の力が抜けた、本質的で、売ることよりも大切にしたいもののために行動していることが伝わってくるブランドです。

「BODE」のクリエイティブ・ディレクターであるEmily Bodeは、ニューヨーク・メンズファッション・ウィークでショーを行った初の女性デザイナーとして知られ、多くの賞も獲得。学生時代からしっかりとしたキャリアの持ち主でもありますが、幼い頃からのアートやハンドクラフトへの情熱をメンズファッションへ昇華していき、今ではメンズ、ウィメンズの両方のコレクションを展開しています。

2016年から2年ほどで立ち上がり、広がりを見せる「BODE」は、いわゆる一般的な量産体制を敷いておらず、ヴィンテージの素材をベースとした服作りを基本としています。また、手刺繍、手織り、アップリケといった工芸品作りの伝統を守り、そうした歴史的技法の伝統を保存することがブランドにとって重要なことだといいます。

source : Blackbird Spyplaneのインタビュー記事に掲載されたEmilyの写真

「⁠Supporting sustainable communities has always been a big part of the brand, but not outwardly from a marketing perspective. It’s simply a natural aspect of Bode.

持続可能なコミュニティをサポートすることは、常にこのブランドの大きな部分を占めてきましたが、マーケティングの観点から外向きに取り組んでいるわけではありません。それは単に Bode の自然な側面なのです。⁠」
— Emily Adams Bode, the Creative Director of BODE

このように語るEmilyの在り方に、自分のコアを深く掘り、そこにある独特の体験や感性を自分のブランドとして外在化させ、ストーリーを吹き込む、理想的な流れを感じます。

自分にとっての大切なものを、誰かにとっての、そして皆にとっての大切なものに広げていったとき、共鳴のブレイクが起こります。

そこには声高に叫ぶことや、よく見せようと作ることは一切存在せず、正直・誠実であり、着実に実行しているというシンプルな事実しかありません。そしてそれが一番パワフルなのです。

 

最後に、“Quiet Sustainability”(クワイエット・サステナビリティ) について私に気づきを与えてくれた、コンサルティング会社Intentionality の創設者であるツォロフェロ・マセラさんの記事より、「静かなる持続可能性」は消費者にとってどんな意味があるのか?」というメッセージをそのまま載せたいと思います。大きな頷きとともに。※自動翻訳

「⁠静かなる持続可能性を受け入れることで、エンパワーメントの感覚が育まれます。個々の行動がいかに小さく見えても、消費者には主体性と影響力があることを思い起こさせます。自分の価値観に沿った意識的な選択を行うことで、消費者は前向きな変化の触媒となり、他の人にもそれに倣うよう促します。

さらに、「静かなる持続可能性」は個人の行動だけに限らず、コミュニティ、組織、さらにその先にまで広がります。同じ志を持つ個人が持続可能性への共通のコミットメントを持って集まると、その影響は飛躍的に大きくなっていきます。政策変更の提唱であれ、草の根運動のサポートであれ、集団行動は有意義な進歩をもたらします。

ですから、日々の生活を送る中で、静かなる持続可能性の力を受け入れましょう。大げさなジェスチャーではなく、静かな決意と揺るぎないコミットメントで、地球とその住民を尊重する選択をするよう努めましょう。一緒に、集団的な努力を通じて、私たちは将来の世代のために、より持続可能で調和のとれた世界を作ることができます。⁠」
— ツォロフェロ・マセラ (コンサルティング会社 Intuitionality社 創業者)

Resource:

The Power of Quiet Sustainability: How Small Actions Make a Big Impact (INTENTIONALITY

The Rise Of Quiet Sustainability: Why Fashion Brands Aren't Shouting About Their Green Efforts Anymore(ELLE

What Is Green Hushing? | Is It Worse Than Green Washing?(LUXIDERS

Our Impact Agenda (lululemon)

How the Familiar Just Got Fresh: Getting to Know Emily Bode, the Coolest Woman in Menswear (modaoperandi.com)

Emily Adams Bode (THIS GENERATION)

Rare grail talk with Emily Bode - 5 fire joints from the BODE HEIRLOOM VAULT (Blackbird Spyplane)

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